建設業を始めるにあたり、「建設業許可なしで工事をしても大丈夫なのか」「建設業許可が不要な場合とはどのようなケースか」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
建設業法では、原則として建設業を営む場合には建設業許可が必要とされています。
しかし、すべての工事で許可が必須というわけではありません。一定金額以下の軽微な工事や、建設業法上の建設工事に該当しない工事など、建設業許可がない場合でも行えるケースが定められています。
では、具体的にどのような工事が「軽微な建設工事」にあたるのか、どのような場合が建設業許可不要な工事となるのか。その判断を誤ると、無許可営業として行政処分や罰則の対象となる可能性もあります。
この記事では、建設業法の定義を踏まえながら、建設業許可が必要な場合と不要な場合の違いをわかりやすく整理し、建設業許可なしでできる工事の範囲について広島の行政書士が解説します。
建設業法上 建設業許可が必要な場合
「建設業」を営もうとする者は、次の「建設業許可が必要ない場合」に掲げる「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除いて、建設業の許可を受けなければなりません。
建設業法上で、「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、「建設工事」の完成を請け負うことをいいます。また、「建設工事」とは、土木建築に関する工事で次に掲げるものをいいます。
土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロツク工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゆんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事
建設業許可が不要な場合と建設業許可なしでできる工事

建設業において、事業規模の小さな個人事業主や小規模事業者等が建設業を営むからといって、許可取得が必須という訳ではありません。それではどのような場合に許可が必要ないのか、一つづつ見ていきたいと思います。
軽微な建設工事とは 建設業許可不要な工事の基準
建設業法では、一定の金額以下であったり小規模な工事の「軽微な建設工事」の場合には、許可を要しないとして例外規定が設けられています。この「軽微な建設工事」とは次のような工事のことをいいます。
・建築一式工事の場合
⇒ 1件の請負代金の額が 1,500 万円に満たない工事、又は、延べ面積が 150 ㎡に満たない木造住宅工事。
・その他の工事の場合
⇒ 1件の請負代金の額が 500 万円に満たない工事。
つまり、例えば専門工事で、金額の低い工事を中心に請け負っているのみであれば、建設業許可がなくても十分に建設業の営業が可能ということになりますが、その際、次の事項に注意をしてください。
※1 請負代金の額は、取引に係る消費税及び地方消費税の額を含みます。
※2 注文者が材料を提供する場合の請負代金の額は、支給材料代(市場価格+運送費)を請負代金の額に加えたものとします。
※3 同一の目的物件であるにもかかわらず、工事の完成を2以上の契約に分割して請負っているときは、正当な理由に基づいて契約を分割したときを除き、各契約の請負代金の額を合計して請負代金の額を判断します。
例えば※2について、下請業者として建設工事を請け負う際に、元請業者から「建設業許可を取ってほしい」「建設業許可がないと仕事を出せない」と言われるケースがよくあると思います。
これは、元請業者が調達した材料費を、請負代金に含めると500万円(税込)以上となってしまうため、下請業者に建設業許可の取得を求めているものになります。軽微な建設工事を超える工事を無許可業者へ発注した場合には、工事を発注した元請業者も罰則が科せられる可能性があります。
法令遵守はもちろんの事ですが、加えて、元請業者との円滑な取引継続を希望する場合には、早急に許可取得の検討が必要なケースではないかと思います。
付帯工事は建設業許可なしでできるのか
軽微な建設工事に該当しない建設工事を請け負うときは、その工事に対応する建設業の許可を受けていなければなりませんが、許可を受けた建設業に係る建設工事の施工に際し、その工事に附帯する他の建設工事(以下「附帯工事」といいます。)があるときは、その附帯工事に関する建設業の許可がなく、かつ、それが軽微な建設工事でなくても、許可を受けている建設業に係る建設工事とともにその附帯工事を請け負うことができます。
①主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事
②主たる建設工事を施工するために生じた他の従たる建設工事
①②のいずれかに該当する工事が附帯工事となり、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいいます。
附帯工事は500万円以上でも無許可で請け負うことができますが、許可を受けた主たる建設工事と主従の関係にあるため、原則として、附帯工事の金額が主たる建設工事の金額を上回ることはありません。
完成を請け負わない工事は建設業許可がない場合でも可能
冒頭で申し上げました通り、建設業法では、「建設業」について次のように定義されています。
建設業法 第二条
2 この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。
したがって、自社(者)物件に係る工事は、建設工事の完成を請け負うものではないため、建設業の許可がなくても施工できます。
建設業法に該当しない工事とは
その他に、広島県の「建設業許可申請の手引き」には、以下のような工事は、建設業法における建設工事には該当しない工事として例示されており、建設業許可の対象にはなりません。
・船舶、汽車、飛行機等土地に定着しない工作物の建造及びその内部における配管、塗装、内装仕上げ、ガラス工事等
・設備関係の保守点検・管理
・樹木等の冬囲い、せん定、施肥、街路樹の枝はらい、苗木の育成販売、樹木の伐採、造林事業等
・道路維持業務における草刈、除土運搬、除雪、路面清掃、側溝清掃等
・砂利採取・採石業務、イベント等における仮設物等の仮設工事、家電販売に伴う付帯物の取付け等
建設業許可を取得すべきか判断するポイント
建設業許可を取得するためには、申請手数料、公的証明書取得費・交通費・通信費といった実費と行政書士報酬額などで数十万円のコストがかかります。自力で申請しようとした場合でも、複雑な要件適合状況のチェック、慣れない書類作成、必要書類の収集等でかなりの手間や負担が発生します。
そして、苦労して建設業許可を取得したにもかかわらず、建設工事の受注が伸びていかなければ、これらの投資が無駄になりかねません。
こうした状況を避けるため、許可が必要と考えた段階で、本当に許可を取るべきかを慎重に判断することが重要です。現在の事業内容、将来の事業計画、主要取引先の性質などを照らし合わせて、費用対効果を冷静に見定める必要があります。
当面は小規模な建設工事だけに専門特化し、経費を抑えて営業していく方針であれば、許可を持たなくとも業務上の支障は少ないでしょう。
よくある質問
- Q建設業許可はすべての工事で必要ですか?
- A
いいえ。すべての工事で建設業許可が必要になるわけではありません。
建設業法では、一定金額未満の軽微な建設工事のみを請け負う場合は、建設業許可なしでも営業が可能とされています。したがって、工事内容や請負金額によっては、建設業許可が不要な場合があります。
- Q建設業許可が不要な場合とはどのようなケースですか?
- A
代表的な建設業許可不要な工事は、次のとおりです。
- 建築一式工事:
- 請負代金が1,500万円(税込)未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
- その他の工事:
- 請負代金が500万円(税込)未満の工事
このような軽微な工事のみを行う場合は、建設業許可なしで事業を行うことができます。
- 建築一式工事:
- Q軽微な建設工事とは具体的に何を指しますか?
- A
軽微な建設工事とは、建設業法で定められた一定規模以下の工事をいいます。
具体的には、
- 建築一式工事:
- 1件の請負代金が1,500万円未満(税込)
- それ以外の工事:
- 1件の請負代金が500万円未満(税込)
が基準となります。
なお、請負代金には消費税が含まれ、注文者支給の材料費も合算される点に注意が必要です。
- 建築一式工事:
- Q材料費を含めると500万円を超える場合、建設業許可は必要ですか?
- A
はい、必要になります。
たとえ契約上の工事費が500万円未満であっても、注文者が提供する材料費を含めて合計額が税込500万円以上になる場合は、軽微な工事には該当しません。
この場合は建設業許可が必要となります。
建設業許可がない場合に500万円以上の工事を請け負うと、建設業法違反となる可能性があります。
- Q建設業法に該当しない工事にはどのようなものがありますか?
- A
建設業法上の「建設工事」に該当しない工事については、建設業許可は不要です。
例えば、
- 土地に定着しない船舶や航空機の内部工事
- 設備の保守点検や管理業務
- 草刈りや除雪などの維持業務
- 家電販売に伴う簡易な取付け工事
などが該当します。
このような建設業法 該当しない工事は、建設業許可不要な工事として扱われます。
建設業許可が必要な場合と不要な場合のまとめ

許可がなくても問題ないケースは決して少なくありません。建設業法では、すべての工事に建設業許可が必要とされているわけではなく、一定の金額以下の軽微な建設工事や、そもそも建設業法に該当しない工事については、建設業許可なしで行うことが認められています。つまり、建設業許可がない場合であっても、直ちに違法になるわけではありません。
特に、軽微な工事を中心に受注している事業者や、建設業許可不要な工事のみを扱っている場合には、無理に許可を取得しなくても事業運営は可能です。建設業許可が不要な場合にまで「とりあえず取得しておけば安心」という理由だけで申請してしまうと、申請費用や行政書士報酬だけでなく、毎年の変更届出や更新手続きといった維持コストが発生し、結果として経営を圧迫する要因になりかねません。
一方で、取引先から建設業許可の提示を求められるケースや、元請として受注規模を拡大していきたい場合には、事情が変わります。請負金額が軽微な建設工事の範囲を超える可能性がある場合や、将来的に事業拡大を見据えている場合には、早い段階で建設業許可の取得を検討することが重要です。建設業許可は単なる法令上の要件にとどまらず、信用力や受注機会に直結する経営戦略の一つでもあります。
大切なのは、「建設業許可なしで続けられるのか」「建設業許可が不要な工事だけで事業を展開していくのか」、それとも「今後は許可が必要な案件にも対応していくのか」を、建設業法のルールを踏まえたうえで判断することです。現在の受注内容、主要な取引先、今後の事業計画を総合的に整理し、費用対効果を見極めたうえで決断することが、後悔のない選択につながります。
建設業許可がない場合でもできることはあります。しかし、できることと、将来やるべきことは必ずしも同じではありません。軽微な工事や建設業法に該当しない工事の範囲を正しく理解し、自社にとって最適なタイミングで建設業許可を取得するかどうかを判断することが、安定した事業運営への第一歩といえるでしょう。
当事務所では、広島県広島市を中心に、建設業許可の要否診断や各種手続きの申請代行サービス等を行っております。初回相談は無料となっております。許可が必要か迷ったときには、ぜひお気軽にご相談ください。



