はじめに:この記事でわかること
「工事の金額が500万円以上にならなければ、建設業許可がなくても問題ない」と思っている方も多いのですが、電気工事は事情が少し違います。事業を伸ばしていくと、登録だけでは受けられない場面が必ず出てきます。
この記事では、広島県で電気工事業を営む方が、登録から建設業許可へスムーズに移行するための流れを整理しました。
- 電気工事業登録のままでは対応できないケースとは?
- 建設業許可(電気工事業)を取得するために必要な要件
- 登録から許可へ移行する際の正しい手順と、やってはいけないこと
- 広島県での申請先と注意事項 よくあるご質問
電気工事業登録で対応できなくなるのはどんなとき?
登録電気工事業者の登録(電気工事業法に基づく都道府県知事等の登録)は、比較的小規模な電気工事を行うための制度です。しかし、事業が順調に成長してくると、次のような壁にぶつかることがあります。
- 税込500万円以上の電気工事を受注したい
建設業法では、500万円以上の電気工事を請け負うには建設業許可(電気工事業)が必要です。登録だけでは対応できません。 - 公共工事に参入したい
公共工事の入札に参加するには、一般的に建設業許可が求められます。経営事項審査(経審)を受けるためにも、まず許可の取得が前提となります。 - 取引先から「許可番号を教えてほしい」と言われた
建設業許可番号は対外的な信頼の証です。電気工事業の登録番号とは別物であるため、許可取得が必要になります。
広島県でも、事業の成長に伴い、登録電気工事業者から建設業許可への移行を検討し始める事業者様が、毎年多く見受けられます。
「登録から許可への切り替え」の制度は存在しない
ここで多くの方が誤解しやすい点をお伝えします。
登録電気工事業者の登録を建設業許可に「変更」や「切り替え」する制度はありません。
「登録をアップグレードする」というイメージを持たれる方もいますが、両者はまったく別の法律に基づく制度です。
正しい対応は以下のとおりです。
登録電気工事業者として登録を受け、営業を開始する
⇒ 事業が軌道に乗り、受注規模が拡大する
⇒ 建設業許可(電気工事業)を新規取得する
⇒ 建設業許可を取得した時点で、登録電気工事業者の登録は失効する
⇒ 「みなし登録電気工事業者」への切替え手続き(廃止届+開始届)を提出する
ここで特に押さえておきたいのは、解体工事業の場合と違って、電気工事業では「登録の廃業届」だけで終わらないという点です。建設業許可を取得すると、それまでの登録は自動的に失効します。そのうえで、「みなし登録電気工事業者」として改めて開始届を出すことで、引き続き電気工事を行える状態になります。
この順番と手続きを守ることが非常に重要です(詳しくは後述)。
電気工事業登録については、以下のページをぜひご覧ください。
建設業許可(電気工事業)を取得するための要件
建設業許可を取得できるかどうかは、以下の要件をすべて満たせるかにかかっています。(広島県知事・一般建設業の場合)
① 経営業務の管理責任者(経管)の要件
会社の経営を実質的に管理してきた人物を「経営業務の管理責任者(経管)」として置く必要があります。
該当するのは次のいずれかの人物です:
- 建設業に関して5年以上の経営経験がある(法人の役員・個人事業主として)
- 建設業許可を持つ会社での役員・個人事業主としての経験がある
ポイント:解体工事業登録のみの期間であっても、実態として建設業経営を行っていたと認められる場合は、経営年数に算入できる可能性があります。
経管は単なる「管理職」ではなく、財務・労務・業務運営など会社全体を統括してきた責任者であることが求められます。また、常勤性(その会社に常時勤務していること)が必要です。
② 営業所技術者(旧:専任技術者)の要件
建設業許可では、各営業所に電気工事業の営業所技術者を1名以上配置しなければなりません。
営業所技術者になることができる資格・免許(主なもの)
- 1級電気工事施工管理技士
- 2級電気工事施工管理技士
- 建設・総合技術監理(建設)
- 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)
- 電気電子・総合技術監理(電気電子)
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士(免状交付後要3年実務経験)
- 電気主任技術者(第1種~第3種)(免状交付後要5年実務経験)
営業所技術者は原則として営業所に常勤である必要があり、現場の施工管理者など他の役職との兼務は原則できません(例外的に一定の要件を満たした場合は兼務可能)。
ポイント:登録電気工事業者の主任電気工事士をされていた方は、その経験や資格をそのまま営業所技術者の要件に活かせる場合があります。
③誠実性の要件
建設業許可の審査においては、申請者や役員等に「誠実性」があることが求められています。ここでいう誠実性とは、建設工事の契約や履行に関して社会的に非難されるような行為がないことを指しています。
④財産的基礎の要件
以下のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上(直前の決算書で確認)
- 500万円以上の資金調達能力(金融機関の預金残高証明書などで証明)
⑤欠格要件等に該当しないこと
建設業許可を受けるためには、申請者や役員等が欠格要件に該当しないことが条件となります。欠格要件とは、法令に基づいて許可を与えられない事由を指し、信頼性のない事業者を排除する役割を担っています。
⑥適切な社会保険への加入
建設業許可を受けるためには、社会保険への適正加入も重要な要件です。これは建設業法だけでなく、労働・社会保険関係法令も同様に遵守し、働く人々の安全と生活を守る観点から強く求められています。
建設業許可の申請要件については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてぜひご覧ください。
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登録から許可へ移行する具体的な手順
登録電気工事業者から建設業許可(電気工事業)への移行は、以下の4ステップで進めます。
ステップ1:要件の事前確認
まず、上記の各要件を自社が満たしているかを確認します。特に確認が必要なのは以下の点です。
- 経管に該当する人物はいるか?経営年数の証明書類は用意できるか?
- 営業所技術者の資格・実務経験は要件を満たしているか?(特に第二種電気工事士の場合は3年、電気主任技術者の場合は5年の実務経験の有無を確認)
- 直近の決算書で自己資本が500万円以上等、財産的基礎をクリアしているか?
- 社会保険に適切に加入しているか?
不明点が多い場合は、早めに行政書士へ相談することをおすすめします。
ステップ2:建設業許可(電気工事業)を申請する
広島県の申請先は、主たる営業所のある市町村によって申請窓口が異なります。詳しくは「広島県の建設業許可|申請窓口一覧」の記事をご確認ください。
申請区分は「新規許可(電気工事業)」となります。審査期間の目安はおおむね45日間です。
ステップ3:建設業許可の取得
許可が下りると、税込500万円以上の電気工事を適法に受注できるようになります。また、公共工事の入札参加資格申請なども可能になります。
ステップ4:「みなし登録電気工事業者」への切り替え手続き
建設業許可を取得した時点で、これまでの登録電気工事業者の登録は失効します。引き続き電気工事を施工するためには、遅滞なく次の手続きが必要です。
この届出を怠ると、改善指示書が来たり、無届の状態で電気工事を行ったとして罰則の対象になったりするおそれがあるため、忘れずに行いましょう。
絶対に注意してほしいポイント
⚠️ 「みなし登録電気工事業者」の届出を忘れない
電気工事業者で特に多い失敗が、建設業許可の取得後に「みなし登録電気工事業者」への切り替え届出を行わないケースです。
建設業許可を取得した瞬間に、それまでの登録電気工事業者の登録は失効します。届出を出さないまま電気工事を続けると、無届で電気工事業を営んだことになり、電気工事業法第40条により2万円以下の罰金の対象となるおそれがあります。
「許可を取れば一安心」ではなく、許可取得後の届出までがセットだとお考えください。
なお、最初から全く登録や届出をせずに電気工事業を営んだ場合(無登録営業)の罰則は「1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金(または併科)」とさらに重くなりますが、建設業許可取得後の届出漏れについては第40条の対象となります。
⚠️ 要件の確認を甘く見ない
「経管になれると思っていたが書類が揃わなかった」「第二種電気工事士の資格はあるが実務経験3年の証明書類が出てこない」といったケースは珍しくありません。申請前に書類の準備状況まで含めて確認することが重要です。
特に電気工事業の場合、実務経験の証明には注文書・契約書・請求書・通帳の入金記録等といった客観的資料が必要になるため、早い段階からの準備をおすすめします。
よくあるご質問(FAQ)
- Q500万円未満の電気工事なら、建設業許可がなくても何でも請け負えますか?
- A
いいえ、そうとは限りません。金額に関係なく、電気工事業登録など、工事の種類に応じた別の登録や資格が必要な場合があります。これらの要件を満たしていなければ、500万円未満の工事でも違反となります。
- Q登録電気工事業者の登録と建設業許可は同時に持つことができますか?
- A
電気工事業の場合、建設業許可を取得した時点で登録電気工事業者の登録は失効する仕組みになっています。したがって両者を同時に保有することはできません。許可取得後は、すみやかに「みなし登録電気工事業者」への切り替え手続き(廃止届+開始届)を行ってください。
- Q登録電気工事業者として営業していた期間は、建設業許可の経管や営業所技術者の実務経験として認められますか?
- A
条件によっては認められます。経管については、登録電気工事業者として営業していた期間であっても、実態として建設業の経営を行っていたと認められれば経営年数に算入できる可能性があります。営業所技術者の実務経験についても、電気工事の実務を行っていた期間は原則として経験年数に含まれます。ただし、いずれも証明できる書類(契約書・請求書・通帳など)が必要になります。
- Q建設業許可(電気工事業)を取得すれば、登録電気工事業者の登録手続きはもう不要ですか?
- A
いいえ、不要ではありません。建設業許可を取得しても、電気工事を自社で施工する以上、「みなし登録電気工事業者」としての届出が別途必要です。建設業許可と電気工事業法上の手続きは、それぞれ別の制度として並行して必要になる、と理解しておいてください。
- Q要件を満たせているか自分では判断が難しいのですが、どうすればよいですか?
- A
行政書士にご相談ください。建設業許可の要件は、経管・営業所技術者・財産的基礎・社会保険など多岐にわたり、書類の揃え方も複雑です。特に実務経験で営業所技術者の要件を満たす場合は、多くの証明書類の準備が必要になることもあります。当事務所では広島県をはじめ、電気工事業の建設業許可取得に関するご相談を承っております。初回相談無料です。
まとめ
電気工事業で建設業許可を取得したいとお考えの広島県内の電気工事業者様は、まず要件の確認から始めてみてください。
電気工事業は、解体工事業など他の業種と比べても、「登録」と「許可」の関係が独特です。建設業許可を取得した瞬間に登録電気工事業者の登録が失効し、「みなし登録電気工事業者」への切り替えが必要になるという、二段構えの手続きを意識する必要があります。
判断が難しい場合は、専門家への相談をおすすめします。行政書士に相談すれば、要件の確認から書類の準備、申請手続き、そして許可取得後の「みなし登録電気工事業者」の届出まで一貫してサポートを受けることができます。
広島市やその周辺地域で建設業許可(電気工事業)のことでお悩みでしたら、当事務所へお気軽にご相談ください。初回相談無料です。
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