経営事項審査(経審)は、公共工事の入札に参加するために欠かせない制度で、建設業者の経営状況や技術力を数値化し、公平な基準で評価する仕組みとして導入されています。
その評価の基準となるのが総合評定値(P点)です。P点は単なる点数ではなく、企業の経営力や社会的信用力を多角的に示す重要な指標であり、入札参加資格の可否や競争力に直結しています。
ただ、初めて経審を受ける会社や制度に不慣れな担当者にとっては「P点の計算方法が難しい」「X1やY点の意味が分からない」といった疑問が多いのも事実です。本記事では、P点の仕組み、各評点(X1〜W点)の意味を整理して解説します。公共工事を目指す建設業者の方や行政書士の代行申請サービスの利用を検討している方にとっても、経審理解の第一歩として役立つ内容です。
経営事項審査(経審)とは何か
建設業法で、国や地方公共団体が発注する公共工事を直接請け負う際に、建設業者は審査を必ず受けなければならない、と規定されています。この建設業者が受ける審査が経審です。広島県で公共工事を発注者から直接請け負いたいと考えたときにも、この経審を受けなければなりません。
経審の全体像や手続きの流れ、必要書類などの基礎知識については、以下の記事で詳しく解説しています。経審を初めて受ける方や制度の仕組みを整理したい方は、ぜひこちらもご参照ください。
総合評定値(P点)の仕組み
経審を受けると、以下のような経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書を取得することができます。この通知書には、X1点・X2点・Z点・W点・Y点といった各評点や総合評定値(P点)といった経審の結果が記載されています。(各評点の内容は後述します。)

この経審の結果については、以下のサイトで直近のものを確認することができます。
一般財団法人 建設業情報管理センター 経営事項審査結果の公表
総合評定値(P点)は、経審の中心となる指標で、単一の基準で決まるものではなく、X1点・X2点・Z点・W点・Y点という五つの評点を組み合わせて算出されます。
公共工事は、国や都道府県、市町村が税金を予算として発注を行う工事です。工事を確実に行うためには、発注者が建設会社を厳正に選定し、適切な契約と管理体制を築くことが必要です。
そのため、このように多角的な評価を導入して、単純な売上高や利益だけでなく、技術者の確保状況、財務状況や社会的責任への取り組みまで、公共工事を請け負う建設業者を総合的に評価し、国や地方自治体が、工事を安心して任せられる会社を選定することができるようになっています。
P点算出式と重み~各評点の構成比率
総合評定値(P)は、各評点を単純に合計するのではなく、あらかじめ定められた比率で加重平均して算出され、バランスよく評価する仕組みになっています。各評点の審査項目や重みの詳細は次のスライドの通りです。

総合評定値(P点)の算出方法は、下記の計算式で行います。
総合評定値(P点) = 0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)
・最高点:2,159
・最低点:6
この式から分かるように、最も重みが大きいのは完成工事高(X1点)・技術力(Z点)で、25%を占めています。これは、企業規模や技術力が公共工事の遂行能力に直結するため、工事実績が豊富な企業ほど有利になります。
次に大きなウエイトを持つのが経営状況(Y点)の20%となっていて、自己資本額など(X2点)と社会性等(W点)は15%づつとなっています。
このように、P点は一つの項目だけで左右されず、複数の要素を組み合わせた総合評価となります。そのため、特定の項目が低くても、他の項目で補うことが可能です。例えば、経営規模は小さくても財務内容や技術力、社会性で高得点を得れば、P点を一定以上に押し上げることができます。
逆に一部に極端な低得点があるとP点を押し下げるため、バランスの取れた経営が求められます。こうした構成比率を理解することで、自社の強化ポイントが明確になり、効率的な経審対策につなげることができます。
各評点の解説
経営規模 X1点
X1点は、建設会社の経営規模を評価する項目です。具体的には、直前2年または3年間の完成工事高の平均値を基準に算出されます。対象となるのは建設業許可を受けている業種の工事で、元請・下請を問わず計上可能ですが、同一工事を複数業種に分けて重複計上することはできません。
総合評定値(P点)に占めるX1点の割合は25%と高い割合を占めているため、完成工事高が多いほど総合評定値(P)の高得点が期待できます。
とは言え、採算度外視の完成工事高拡大路線で、仮にX1点が高得点となったとしても、利益率の悪化により他の評点が下がってしまっては元も子もありませんので、会社の経営を安定させつつ、売上高を伸ばしていけるようバランスをとっていく必要があります。
経営規模 X2点
X2点は、X1点と同様に、建設会社の経営規模を評価する項目です。主な評価要素は自己資本額と平均利益額です。総合評定値(P点)に占めるX2点の割合は15%となっています。
自己資本額とは、貸借対照表の純資産の額のことです。直前決算の額か直前2年の平均額を選択して評価を受けます。
平均利益額とは、利払前税引前償却前利益のことをいい、営業利益に減価償却費を足した額となります。直前2年の平均額が評価対象となります。
つまり、自己資本額が高く、平均利益額も安定的に高いほど、X2点や総合評定値(P点)の高得点が期待できます。
技術力 Z点
Z点は、企業に在籍している技術職員数と元請完成工事高の2つが主な評価要素となっていいます。
技術職員数については、審査基準日時点で6ヶ月を超える期間、会社に在籍している技術者の人数と、その技術者が保有している資格に応じて加点されます。ただし、1人の技術者が複数の資格を保有している場合には、同一の技術者が加点できる業種は2業種までとなっています。
元請完成工事高については、工事種類別の完成工事高のうち、元請工事の部分が評価の対象となります。
このように、Z点は、資格を保有している技術者の人数が多いほど、また元請としての工事実績が豊富なほど高得点になりやすい項目となっています。
社会性等 W点
W点は、企業の社会的責任や労務環境、安全・環境対策への取り組みを評価する項目です。具体的な評価項目には以下のような項目となっています。
これらは近年改正によって重視される傾向が強まっており、単なる経営規模や財務指標だけでなく、社会性を持つ企業を評価する方向性が打ち出されたものです。
| 労働福祉の状況 | – 雇用保険の加入の有無 – 健康保険の加入の有無 – 厚生年金保険の加入の有無 – 建設業退職金共済制度加入の有無 – 退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無 – 法定外労働災害補償制度加入の有無 |
| 建設業の営業継続の状況 | – 営業年数 – 民事再生法又は会社更生法の適用の有無 |
| 防災活動への貢献の状況 | – 防災協定の締結の有無 |
| 法令遵守の状況 | – 営業停止処分の有無 – 指示処分の有無 |
| 建設業の経理の状況 | – 監査の受審状況 – 公認会計士等の数 – 二級建築経理試験合格者の数 |
| 研究開発の状況 | – 研究開発費 |
| 建設機械の保有状況 | – 建設機械の保有及びリース台数 |
| 国際標準化機構が定めた規格による登録の状況 | – ISO9001の登録の有無 – ISO14001の登録の有無 |
| 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 | – 若年技術職員の継続的な育成及び確保 – 新規若年技術職員の育成及び確保 |
| 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況 | – CPD単位取得数 – 技能者数 – レベル向上者数 – 技能者数 – 控除対象者数 |
経営状況 Y点
Y点は、登録経営状況分析機関による経営状況分析によって算出される財務指標の評価です。Y点の審査対象は以下の8項目で、いずれも決算書の数値を基に計算されます。
これらの8つの項目にはそれぞれ寄与度が設定されており、寄与度の高い項目から対策していくことが、Y点で高得点を得るポイントとなります。
手続き的には、経審を受ける前に、登録経営状況分析機関で経営状況分析の結果通知を取得しておく必要があります。
| 負債抵抗力 | 純支払利息比率 |
| 負債回転期間 | |
| 収益性・効率性 | 総資本売上総利益率 |
| 売上高経常利益率 | |
| 財務健全性 | 自己資本対固定資産比率 |
| 自己資本比率 | |
| 絶対的力量 | 営業キャッシュフロー |
| 利益剰余金 |
これらを総合的に評価し、財務の健全性を点数化します。黒字決算や健全な資本構成の企業は高得点を得やすく、逆に負債比率が高い企業は点数が伸びにくくなります。
よくある質問
- Q総合評定値(P点)はどのくらいあれば入札に参加できますか?
- A
経営事項審査の総合評定値(P点)平均は700点ほどです。小規模~中規模な工事であればもう少し低い評点でも参加できる可能性があります。
- QX1点・X2点・Z点・W点・Y点の中で特に重要な項目はどれですか?
- A
一番大きな比率を占めるのはX1点(完成工事高)やZ点(技術職員数・元請完成工事高)で25%です。ただし、全体のバランスが取れていないとP点全体が伸びません。総合的な対策が重要です。
- QP点を上げるためにすぐに取り組めることはありますか?
- A
短期的には、社会保険加入の徹底やISO認証取得、技術職員の資格取得支援などが有効です。財務改善や工事実績の積み上げは時間がかかりますが、継続的な取組みによって将来的なP点向上につながります。
- Q経審の有効期間はどれくらいですか?
- A
経審の有効期間は審査基準日から1年7か月と定められています。公共工事に継続して参加するためには、毎年決算後に速やかに経審を申請するのが望ましいです。
まとめ
経営事項審査(経審)は、公共工事の入札に参加するために欠かせない制度であり、その中心となるのが総合評定値(P点)です。P点は、単なる経営規模だけでなく、財務の健全性や技術者の確保、社会的責任への取り組みまで幅広く評価される点が特徴です。
また、P点は各評点を加重平均することで算出されるため、一部に弱点があっても他の項目で補うことができるため、バランスの取れた経営管理が求められます。自社の強みと弱みを把握し、どの評点を強化すべきかを明確にすることが、経審対策の第一歩といえるでしょう。
「手続きが複雑で不安」「点数をどう改善すればよいか分からない」という方もご安心ください。経営事項審査の準備から申請完了まで、当事務所が一貫して伴走いたします。どうぞお気軽にご相談ください。


